大腸癌は2021年の最新の統計では男性の死因の第2位、女性の死因の第1位となりました。当院では症状(腹痛、血便など)のある方、大腸癌検診で陽性だった方を中心に大腸カメラを行っています。しかし、大腸カメラは苦痛を伴うため希望されない患者さんも根強くいます。症状や検診結果を放置して癌が進行してしまうこともあります。大腸癌は早く見つけることができれば助かる癌です。大腸癌のステージ別生存率などの詳しい情報はがんセンターのホームページ(国立がん研究センター 大腸癌の生存率)をご覧下さい。
当院ではできるだけ苦痛の少ない大腸カメラを目指して様々な工夫を行っています。それでも痛みが強い方には注射の鎮静剤(セルシン)を使うこともできます(*注)。10 mm程度までの大腸ポリープの外来切除も行っています。大腸カメラは完全予約制で、検査日は毎週月曜・木曜の午後からと、第1・第3土曜の午前中です。費用は3割負担で大腸カメラのみなら6,000円、組織採取が加わると10,000~17,000円、ポリープ切除まで行うと20,000~25,000円程度です。当院はクレジットカード等での支払いができないため現金の用意をお願いします。
*注 鎮静剤の使用は検査当日の車の運転や眠気をあると困る仕事をしない患者さんに限ります。必ず送迎してもらうか、タクシーを利用してお帰り下さい。
《工夫①:大腸カメラを短時間で挿入》
挿入時間を短くすることが一番重要です。当院では肛門から盲腸まで男性で平均4分半、女性で平均6分と短時間で入れています。大腸の解剖は下の図のようになっています。折りたたまれた大腸の中を普段の便が進む方向とは逆方向にカメラが進むため、大腸が不自然に伸びたり、引っ張られたりして痛みが生じ、特に曲がり角(下の図の5カ所)で強く痛みを感じます。また、挿入に時間がかかると大量の空気が腸にたまるため、お腹が張って苦しくなります。
《工夫②:S状結腸に湯を300 mlを入れる》
折れ曲がったS状結腸の手前から人肌に温めた湯を300 ml入れ、湯の重みでS状結腸を直線化し、湯で満たして視野を確保した大腸のトンネルの中を潜水艦のようにカメラを入れていきます。
《工夫③:初めからレントゲンを使用》
痛みが出やすい部位に差し掛かる前に透視(レントゲン)を使い、カメラの位置やどのような形を入っているか確認します。より安全に苦痛少なくカメラを行うことができます。
《工夫④:熟練の介助者による圧迫》
当院では医師、看護師、男性の放射線技師の3人でチームを組んで大腸カメラを行います。当院の一番の特徴として、痛む場所に差し掛かると放射線技師がお腹を両手で圧迫して大腸が伸びないように支えています。S状結腸など一部の大腸は深い位置にあり、圧迫には力や技術が必要で、当院の技師は大腸の走行を熟知しており頼りになります。また、多くの病院では大腸カメラは医師と看護師の2人で行うことが多いのですが、圧迫に専念できる3人目が挿入時間の短縮と痛みの軽減に非常に貢献しています。