2004年CT装置導入から2021年までの17年間で肺癌は約240人が見つかりました。見つかった肺癌のほとんどは10 mm以下の早期肺癌か前癌病変(細胞が癌化する前の状態)です。一番問題になるのは、癌かどうか判断が難しい非常に小さな(5~10mm)病変を見つけたときの対処方法です。多くの場合、すぐに手術せず定期的なCT検査で病変の大きさ、形、濃度変化などを経過観察することが一番重要です。 患者さんは不安になりすぐに専門医の紹介を希望しますが、専門医を受診しても結局経過観察になります。しかし、小さな病変でも以下の5つのポイントによってはすぐに手術が必要な場合もありますので、対処方法はそう単純ではありません。
◆肺の小さな病変を経過観察する上での5つのポイント◆
1. 大きさ
2. 病変の形
3. 病変の色(濃度) 非常に淡い影、濃い影、部分的に濃い影など
4. 病変と胸膜(肺の膜)の距離や胸膜の変化
5. 追跡期間と検査の間隔
対処方法の違いについて患者さんたちの知りたいという要望が強いので、次にいろいろな症例をあげました。
小さな肺の病変が見つかった患者さんがどのような経過をたどったか、実際の症例でわかりやすく解説しました。
これまでに紹介した10症例の小さな肺病変は性状やサイズ、増大速度などさまざまです。最後の症例10と炎症性病変(症例4,症例9)の2症例を除きいずれも癌が確定しています。見つかった病変が10mmに満たないとき、その病変が増大するのか、はたまた縮小ないし消失してしまうのかは経過をみないとわかりません。当院では年齢を考慮しつつ手術の時期や適応を正確に判断しています。ここに紹介した10症例は、当院で経験した数百症例の肺癌を疑った症例の中から厳選して患者さんの了解を得て掲載しました。肺癌が疑われたとき過度に不安になったり楽観したりしないよう、これらの症例を参考にしてください。