患者背景:60代 女性 2型糖尿病、高血圧で定期通院中
発見のきっかけ:定期の胸部レントゲンで異常が見つかりました。
胸部レントゲン写真の所見:左肺門部(左肺の根元)に白っぽく見える影(図2 円の中心部)が出現し、これは1年前 (図1)には認められませんでした。また、肺を横向きの画像でも図3と比較して、図4では同様に白っぽく見える影が見られ、1年前のレントゲンとは明らかに変化しています。
CT画像の所見: 左肺門部に径12×17mmの内部が密に詰まった腫瘤状陰影(図5)が写っています。この陰影が気管支を押しつぶしています図5(→)。図8(→)では、左肺門部のリンパ節が腫れているように見えます。これらの所見から原発性肺癌を疑いました。
*図6、図7はレントゲン写真図2、図4と比較するために作成しています。
その後の経過: 速やかに大学病院呼吸器外科へ紹介しました。PET-CT(positron emission tomography 陽電子放出断層撮影)を行うと病変部に強い集積(強く光る 図9)が見られました。その他の検査も肺癌が強く疑われる結果であったため、患者さんも病状を理解いただいた上で手術に同意され、診断と治療を兼ねた外科手術が計画されました。
手術の結果:炎症性結節(良性病変)との診断でした。
解説とまとめ:本症例では、病変が左肺の根元に存在しています。また、内部がしっかり詰まった腫瘤状陰影で気管支の圧排やリンパ節の腫脹、PET-CT結果など悪性を考える所見ばかりで手術の結果を聞いて驚きでした。もしタチの悪い癌であったら、進行の状況では左肺の切除範囲が大きくなり、術後の生活に支障をきたしかねない状態であったので安堵しています。