患者背景:70代 男性 高血圧と肺気腫で定期通院中
発見のきっかけ:肺気腫経過観察のCTで見つかりました。
CT像の経過:肺気腫(主に喫煙が原因でおこる疾患)が主体の右肺上葉S2(右肺の上の区域を示します)に小さな結節(下図左端A-1)を認めました。1年後の画像(下図中央A-2)、1年半後の画像(下図右端A-3)と次第に濃く丸くなって増大していることがわかります。病変の辺縁は不整で周囲には細かなとげ状の変化が多数見られます。また、図下段(B-1,B-2)別の角度から見た画像(矢状断/体を左右に分ける面で切った画像)では、フリスビーの様な円盤状であった病変が膨らんで増大しています。これらの画像から肺癌を否定しえません。早速、A病院呼吸器外科紹介となりました。
その後の経過: A病院でPET-CT(positron emission tomography 陽電子放出断層撮影)を行うと病変部に強い集積(強く光る)が見られ、肺癌を強く疑い外科手術となりました。
手術の結果は炎症性肉芽腫で、摘出した組織や喀痰培養から非結核性抗酸菌症の一種であるマイコバクテリウム・アビウムが検出されました。
手術の結果:非結核性抗酸菌症の炎症性肉芽腫(マイコバクテリウム・アビウムによる炎症後にできた塊)
まとめ:この症例は、専門医も肺癌を強く疑って手術となりましたが、炎症による肉芽腫でした。このような悩ましい症例は、当院で肺癌を疑って手術を行った患者さんの中に数例存在します。専門医にたずねると手術件数の0.5%程度と言われているそうです。この患者さんはわたしたちが再度CT画像を見直しても、やはり癌を疑って外科へ紹介すると思います。
専門医を紹介するポイントは、灰本クリニックホームページ内の「肺癌の症例」でも解説していますので参考にしてください。