悪玉(LDL)コレステロールは、特に心臓を栄養する動脈(冠動脈:かんどうみゃく)の動脈硬化を悪化させ、狭心症や心筋梗塞の原因となります。高い数値が続くようなら治療をすすめます。ただし、検診のLDLコレステロールの基準値(70~140 mg/dl)は欧米人を基準としています。日本人の大規模な研究によるとLDLコレステロール値は男性で160 mg/dl以上、女性では180 mg/dl以上になると心筋梗塞死が増えるようです。2021年には韓国から東アジア人(モンゴロイド)のLDLコレステロールと疾患に関する140万人という桁違いな大規模研究の結果が発表されました。この論文は先生の解説付きですので是非お読み下さい。
当院ではこのデータを参考に頸動脈エコーによって実際の動脈に沈着したコレステロールの厚さも測定して薬の治療を開始するかどうか決めます。
喫煙癧や糖尿病がある場合は心筋梗塞の危険性が大幅に上昇するので、LDLコレステロール値を120 mg/dl以下まで下げます。もし、心筋梗塞を発症すると緊急カテーテル治療が行われ数日間の入院で100万円(3割負担の場合)の医療費がかかり、5%は急性期に亡くなります。心筋梗塞になる前にスタチンという薬を早めに飲んで予防した方が断然安あがりです。スタチンは1日7~13円(3割負担の場合)と安価でほとんどの患者さんで効果が得られます。10年飲んでも負担額は数万円で済むので大幅に医療費が削減できます。
中性脂肪は飲酒量が多い人、糖質(炭水化物)の摂取が多い人で高くなります。脂質をたくさん食べると上がるわけではありません。中性脂肪は150 mg/dl以上で異常値とされますが、多くの研究で心血管疾患(狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)にほとんど関係していないことが分かっています。ただし、500 mg/dl以上になると急性膵炎の発症の危険があります。急性膵炎は年齢にかかわらず怖い病気で死亡率は3%、重症急性膵炎になると死亡率は10%にもなります。
当院では500 mg/dl以上の方にはまずはゆるやかな糖質制限食をお薦めしています。ゆるやかな糖質制限食は管理栄養士のもとでしっかり行えば薬よりも効果があります。それができない患者さんでは薬を投与します。