投稿日時:2020年10月15日
我が国の65歳以上の8~10%の人は認知症であると推定され、年齢が上がるごとに増加して85歳以上になるとその有病率は約30%に達すると言われています。そして超高齢化社会に突入している現在の日本では認知症患者数は300万人程度にも達しているという意見も出ています。そんな認知症が実は高血圧と関連があることを皆さんはご存じでしょうか?
福岡県のやや西部に位置する久山町の住民の65歳から79歳の約670人を約17年間追跡調査した研究があります。その結果、血管性認知症※が120mmHg未満の正常血圧と比較して140~159mmHgの高血圧では約6倍、160mmHg以上の高血圧では約10倍も起こりやすかったのです。更にこの血管性認知症の起こりやすさは中年期での血圧値と関連があるものの、高齢期での血圧値とは関連がありませんでした。つまり、認知症を発症しやすくなる高齢期に血圧を正常にコントロールしても中年期に血圧が管理されていなければ血管性認知症の発症を抑えることができないということです。
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)は高血圧との関連性が大きく、寝たきりになる原因として第1位に挙げられます。特に比較的若い年代では脳卒中だけでなく、高齢期での認知症を予防するために血圧をしっかり管理することが重要です。(薬剤師 北澤雄一)
※血管性認知症:脳卒中によって脳内の神経組織が破壊され、それが要因となって現れる認知症
出典:『Midlife and Late-Life Blood Pressure and Dementia in Japanese Elderly The Hisayama Study』Toshiharu Ninomiya et al. Hypertension 2011;58:22-28.