灰本クリニック

痩せと肥満と認知症の関係

投稿日時:2024年01月01日

 2023年12月に日本人の体格指数(体重kg÷身長m÷身長m、痩せや肥満の指標、数値が大きいほど太っていることを示す)と認知症の関係の研究が発表されたので紹介します。日常の診療では認知症の発症前後から痩せていく印象がありますが、果たして本当にそうでしょうか。
 まず40~59歳の男女3万7千人の体格指数を登録し、その10年後(50~69歳)でも体格指数を調査しました。その後も調査を続け、約3000人が認知症を発症したので、どのような体格の人が発症したかを解析しています(下図)。この研究では体格指数別に14-18.9が痩せ、19-22.9が痩せ気味、23-24.9が標準、24.9-26.9が太り気味、27以上を肥満と分類し、標準の人の認知症の発症を1として他の体格の人がどの程度発症したか相対的に数字で表しています。

<体格指数と認知症の関係(40-59歳):研究開始時>
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統計学的に有意差あり
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<体格指数と認知症の関係)(50-69歳):研究開始10年後>
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統計学的に有意差あり
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出典論文のデータより作成

 図(上)を見ると、中年前半(40-59歳)では男女ともに標準から小太り体型(体格指数23-26.9)が最も認知症になりにくく、痩せ(22.9以下)も肥満(27以上)もやや認知症なりやすいと言えます。しかし、図(下)を見ると、中年後期(50-69歳)では太っていても認知症の危険はほとんど上がらず、痩せ(18.9未満)の人の方が圧倒的に危険でした。つまり、極端な肥満の方を除き、認知症になりたくないのであれば、中年前半(40-59歳)では標準化から小太り体型を維持し、中年後半(50歳以上)は痩せない、むしろ少し太った方がよさそうです。
 この理由として、中年前半は認知症の原因のひとつである動脈硬化を引き起こす生活習慣病(糖尿病、高血圧、高コレステロールなど)を発症した方が認知症になりやすいため「肥満」が不利となり、中年後半以降は入院が必要となるような命にかかわる病気(癌、心不全、肺炎などの感染症)の発症が増え、これらの病気になったり入退院を繰り返すことで脳にダメージが加わり認知症になりやすくなるため、これらの病気に弱い「痩せ」が不利になると我々は考えています。(文責:灰本耕基)

出典:Body mass index, weight change in midlife, and dementia incidence: the Japan Public Health Center-based Prospective Study
肥満度,中年期における体重変化と認知症の発症率:JPHCの前向き研究
Miwa Tashiro, et al.
Alzheimers Dement (Amst). 2023 Nov 23;15(4):e12507. doi: 10.1002/dad2.12507.


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