灰本クリニック

就寝時の降圧薬の服薬は心血管リスク低下を向上させる

投稿日時:2020年01月10日

Bedtime hypertension treatment improves cardiovascular risk reduction: the Hygia Chronotherapy Trial.
Hermida RC, et al  Eur Heart J. 2019. Oct.22. DOI; 10.1093/eurheartj/ehz754


【目的】
 臨床プライマリケアという環境で行われたHygia Chronotherapy Trialは、就寝時の降圧薬の服薬が起床時の服薬と比較して、心血管疾患(CVD)のリスク低下を改善させるかどうかを調査するためにデザインされた。

【方法・結果】
 この多施設共同、比較対照、前向きエンドポイント試験では、19084人の高血圧患者(男性10614人/ 女性8470人、平均年齢60.5±13.7歳)を一日の中で1剤以上の降圧薬を寝る前に服用する群(n=9552人)と起床時に服用する群(n=9532人)に1対1で割り当てた。組み入れ時および追跡期間中の受診時に(少なくとも年に1回)外来血圧(ABP)モニタリングを48時間行った。追跡期間の中央値6.3年の間に、1752人の参加者が初発のCVDアウトカム(CVD死、心筋梗塞、冠動脈血管再建術、心不全、脳卒中)を発症した。降圧薬を就寝時に服用した患者は、起床時に服用した患者と比較して年齢、性別、2型糖尿病、慢性腎疾患、喫煙、HDLコレステロール、睡眠時の収縮期血圧の平均値、睡眠時の相対収縮期血圧の低下とCVDイベントの既往歴といった大きく影響を及ぼす患者特性を調整すると有意に低いハザード比を示し、初発のCVDアウトカム [0.55(95%CI 0.50-0.61)、P <0.001]および単独でのそれぞれのCVDアウトカム、すなわちCVD死[0.44(0.34-0.56)]、心筋梗塞[0.66(0.52-0.84)]、冠動脈血行再建[0.60(0.47-0.75)]、心不全[0.58(0.49-0.70)]、脳卒中[ 0.51(0.41-0.63)]であった。(すべてにおいてP <0.001 )

【結論】
 就寝時に1剤以上の血圧降下薬が処方された高血圧患者の日常的な服薬は、起床時の服薬とは対照的にABPコントロールが改善(特に睡眠中の血圧の大幅な低下と睡眠時の相対的血圧低下の増加、すなわち血圧低下)された。また最も重要なのは主要CVDイベントの発症が著しく減少したことである。

【読後感想】
 今回は降圧薬の強さの比較等ではなく、服用タイミングを変えることでCVDリスクが減るかどうかの試験である。結果は就寝時服用で驚くほどCVDリスクが減る。1日1回しか降圧薬を飲まない人であれば就寝前に薬を飲むことがCVDリスク低下の恩恵を受けられることになるが、朝の血圧が低い方であれば就寝前に薬を飲むことで朝の血圧がさらに下がりすぎてふらつく、利尿剤を夜に飲んで頻尿の副作用はどうするかなどの問題点も考えられるので自己判断での服用タイミング変更はお勧めできない。必ず主治医に論文のデータを持って就寝前服用に変更してもよいか確認を取っていただきたい。これから更なる詳細な研究が必要な部分はあるものの、安全な範囲では就寝時の降圧薬服用が良いように思われる。

(じん薬局 薬剤師 松岡武徳)


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