灰本クリニック

糖尿病の患者さんの外科手術の死亡率と手術前のHbA1cは関係がない

投稿日時:2020年04月20日

 一般的に糖尿病の患者さんは、糖尿病でない患者さんに比べて外科手術後の合併症(傷の感染など)や死亡率が高いと言われています。当院にも整形外科や外科の先生から「手術までにHbA1c*を7.0%いや6.5%まで下げてくれ」と依頼が来ることあります。ただ、これらの数値に合併症や死亡率を減らすという根拠はありません。(*HbA1c=過去2カ月間の平均血糖を示す指標.高いほど糖尿病が重症であることを示す)

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 2018年に「糖尿病治療」に掲載された論文では、約6000例の心臓以外の手術と心臓の手術を解析し、手術前のHbA1cは手術30日後の死亡率に全く影響していなかったと報告しています。ただ、手術後3日間の平均血糖値は死亡率に関連しており、心臓以外の手術(癌の手術など)では術後の平均血糖が高いほど死亡率がわずかですが増えていきます。心臓の手術(冠動脈バイパスや弁膜症の手術など)では術後の平均血糖が140 mg/dlで最も死亡率が低いU字カーブを示しました(下図参照)。この論文から分かることは、手術前のHbA1cは全く関係がなく、手術後の血糖管理が重要だということです。手術前のHbA1cは低血糖をおこさないように7.0-7.5%前後でほどほどに管理し、手術後の血糖管理は短期間インスリン注射を使ってでもしっかり行うことが肝心と考えます。(文責:灰本耕基)

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(出典論文より抜粋して日本語化)

 

出典:Effect of A1C and Glucose on Postoperative Mortality in Noncardiac and Cardiac Surgeries.
非心臓および心臓手術における術後死亡率に対するA1Cおよびグルコースの影響
Diabetes Care. 2018 Apr;41(4):782-788.
van den Boom W, Schroeder RA, Manning MW, Setji TL, Fiestan GO, Dunson DB.


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