投稿日時:2020年07月20日
皆さんは“プラセボ効果”という言葉を聞いたことがありますか?“偽薬効果”とも呼ばれ、効果のないはずの成分でつくられた薬剤(偽薬)によってもたらされる効果のことで、ときに心理効果により症状を軽減することがあると言われています。実は不眠症の治療で処方される睡眠薬においてもそのプラセボ効果が認められているのです。
睡眠薬のプラセボ効果を評価した色々な研究を集めて、それらをひとつにまとめて解析した結果が2015年に発表されています。合計で約4000人を対象に入眠までの時間や全体の睡眠時間、入眠後の覚醒などに対する偽薬の効果が評価されました。解析の結果、評価項目のそれぞれにおいて不眠症の症状の軽減が認められ、また睡眠の質といった主観的な評価項目についても改善が認められたのです。さらにこの研究結果における偽薬の効果は本物の睡眠薬の効果と同等の64%の有効率を達成することも示されました。
今後このプラセボ効果が実際に不眠症の治療に活用できるかも知れません。長期にわたって睡眠薬を服用している人は依存症になってしまっていることが多く、睡眠薬の量を減らしたり、服薬を止めることができないことが問題になっています。なかなか睡眠薬が手放せない方にはこのプラセボ効果についての研究結果を是非知ってもらいたいと思います。そして少しでも睡眠薬から離脱するきっかけになれば幸いです。もしかするとあなたの睡眠薬、本当は必要ないかも知れませんよ。
(薬剤師 北澤雄一)
出典:『Effect of Placebo Conditions on Polysomnographic Parameters in Primary Insomnia: A Meta-Analysis』Alexander Winkler et al. SLEEP, Vol. 38, No. 6, 2015