患者背景:60才代 男性 毎年検診で来院する患者さん
発見のきっかけ:市の肺癌検診の胸部レントゲンで右肺に異常を認め、自覚症状は特にありませんでした。
胸部レントゲンの所見:右の写真のように、右肺の真ん中の○で囲んだ位置に、肋骨と重なって非常に淡い影が写っていました。
解説:胸部レントゲンに写る影にはさまざまなものがありますが、特に淡く小さな影は肋骨やその他の骨に重なると見えにくく、見落としやすいので慎重に見る必要があります。
胸部CTの所見と病変の特徴:レントゲンと同じ位置に長径13mmの病変が見つかりました。CT画像下図1-1の拡大写真(図1-2)で見ると、イメージ図のオナモミのように表面を無数の小さなトゲが覆っているように見えます。さらに病変はかなり濃く、別の肺癌患者さん(下図2)のスリガラス状の淡い病変と比べると全く違うことがわかります。3カ月程度の短い期間で経過を診て縮小、消失しなければ癌を否定できません。もう少し大きくなると転移の危険があるため、外科手術が必要と判断しA総合病院呼吸器外科へ紹介した結果、専門医も同じ見解で手術となりました。
手術結果:ステージⅠA1の肺癌(腺癌)
解説:下図2の様な淡いスリガラス状の病変は進行が比較的ゆっくりで経過観察ができますが、濃い病変では進行が早いため、この患者さんの様な病変を見つけたときは短期間の経過観察で縮小、消失しなけらば速やかに専門医へ紹介します。