患者背景:60代 男性
発見の経緯:定期に撮影するレントゲンで見つかりました。
胸部レントゲンの所見:下の写真図1と図2は一年間の変化です。右肺の○で囲んだ肋間(肋骨と肋骨の間)に写る小さな淡い影が、わずかに増大していました。
解説:レントゲンに写る小さな影は肋骨や他の骨に重なると見えにくくなりますが、この患者さんでは肋間に病変が写っていたため、変化がはっきりとわかります。
胸部CTの所見と病変の特徴:右肺のレントゲンと同じ位置に長径8mmの病変が見つかりました。拡大写真(図3)で見ると、胸膜(肺を取り囲む膜)近くに径8mmのいびつな形の濃い病変を確認しました。このような小さな病変を癌と診断するには経過を見る必要があるので、3ヶ月後に再検査としました。そのCT(図4)では、初回のCTと比べて大きさが1~2mmほど増大しており、2本のとげの様な構造は胸膜に達していました。
初回(図5)の病変部を黄色に、3ヶ月後(図6)の病変部をピンク色に塗り分け比較(図7)すると、一回り大きく形も変化していることがよくわかります。
経過:3ヶ月間の増大速度は速く、形などの特徴から肺癌を強く疑いました。紹介先のA病院呼吸器外科でも早期肺癌と診断され外科手術となりました。
確定診断:ステージⅠAの肺腺癌
解説:病変が小さくとも濃くて不整形な結節は、3ヶ月の経過で増大したり周囲の血管や胸膜を引き込むなどのわずかな変化があれば癌を強く疑います。症例1や症例5で紹介した淡い病変とは異なり、進行も早く小さくても転移の危険があるため速やかな外科手術が必要になります。