灰本クリニック

ローカーボ食指導法の進歩 その3 もっとゆるやかに糖質を減らす

投稿日時:2020年04月28日

  1. 夕食あるいは朝夕食で糖質を減らす
     糖尿病の重症度(ヘモグロビンエーワンシーの値)に応じて3段階で糖質制限を行い、糖質が減った分のカロリーを脂摂取増やす。患者へ糖質が多い食品のリストを渡しこれ以外ならなんでも食べてよい。この方法はきわめてわかりやすいので高齢者や独身男性にも広まっていった。そして、その効果は抜群で薬をほとんど使わずにヘモグロビンエーワンシーを男で1.5%、女で1.0%も下げることができた。しっかり実行すればほとんどの患者は薬を使わずに目標値の7.0%まで到達できたのである。しかも体重は3.5kg減り、善玉コレステロールは上がり、中性脂肪は下がり、メタボのほとんどはこの食事療法によって解決できた。2005年から2010年までローカーボはまさに順風満帆だった。
     
  2. 糖質を減らしすぎると癌が増える
     ところが、わたしは一抹の不安を抱えていた。厳しいローカーボを10年~20年継続すると癌や他の病気が増えないのだろうか。食事や栄養と病気の関係について世界でもっともすぐれた研究を行っているのはアメリカのハーバード大学公衆衛生学部で、その研究者らが13万人を20年以上追跡してみると糖質を減少すればするほど男で癌死と心筋梗塞死、女で癌死が増えるという結果を2010年に発表したのだ。

     当時、日本では3食とも全部糖質を抜くという厳しいローカーボが横行し、それに危機感を感じていたわたしはいち早くこの論文を日本語に翻訳、NPOローカーボ食研究会のホームページに掲載して厳しいローカーボを続けないように警鐘を鳴らした。
     
  3. 糖質の減らしすぎを予防する
     一方、これら海外の研究に影響を受けたわたしたちは、もっとゆるやかに制限してもヘモグロビンエーワンシーを下げられる食事指導法の開発に迫られた。

     日本人男性は平均300g/日、女性は260g/日食べている。これまでの指導法で十分な効果があったにせよ、あまりにおおざっぱなのでグラム単位の指導ができないものか。そのような目的で、患者さんの治療開始前と6ヶ月後の食事日記を調査・比較してみた。その結果、夕食だけ一日おき、夕食から毎日、朝夕食から毎日糖質を抜くとそれぞれ一日の糖質減少は70g、100g、170gとなり、HbA1cはそれぞれ0.5%、1.0%、3.0%下がることがわかってきた。

     この結果を栄養指導に組み込むと、Aさんは一日100g、Bさんは一日130gの糖質を減らす、つまり患者個人でそれぞれ違った減少量を正確に設定できた。患者さんに主な食品に含まれる糖質含有量(たとえばご飯一杯に50g糖質)のリストを渡し、糖質100g減らすためにははどの食品を減らせばよいか理解してもらった。この方法によって2013年には糖質の減らし過ぎを予防できるようになった。

     ところが、人体や人の食行動はそう簡単ではない。上記のような方法では血糖が予想より下がりすぎる症例が2014年以降たくさん見られるようになった。これはなぜか、それを解決するためにはもっと現実的な次の課題が登場したのである。

     灰本クリニック  灰本 元

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