食後の血糖値を上げインスリンを分泌させるのは糖質を食べたときだけで、脂質やタンパク質をいくら食べても血糖も上がりませんしインスリンも出ません。糖質を制限すると、①血糖値やヘモグロビンエーワンシーが下がる(薬を使わなくても1.0%以上下がる)、②体重や内臓脂肪が減る、③善玉コレステロール(HDL)が上がり中性脂肪は下がる、④糖尿病薬が劇的に減る、などの効果が得られます。当院では2004年から糖尿病やメタボリック症候群の治療にこの食事療法を導入しています。2020年4月現在、1000人を超える糖尿病患者がこの食餌療法に取り組んでおり、薬の処方数は同等の専門医療機関に比べて1/5に減っています。
しかし、10年以上の長い期間にわたって糖質摂取量を減らしすぎると癌死や心筋梗塞死が増えることも海外の大規模な研究から明らかとなっています。当院では“ゆるやかに糖質を制限する”のを基本としており、その栄養指導法の発展に取り組んでいます。それらを担うのは管理栄養士で2人の常勤と1人のパートが勤務しています。
わたしたちは多くの糖尿病患者さんたちの協力を得て2006年から糖尿病の臨床研究を開始、2008年から2020年まで9編の英論文を海外専門誌に発表して来ました。14年にわたって糖質制限食の臨床研究を続けているのは世界でも灰本クリニックだけで、世界的にみても症例数やデータを最も蓄積した医療機関です。
このコラムでは、医師と管理栄養士が毎日の臨床で感じていることやこれまでの当院の研究成果をわかりやすく解説します。
ゆるやかな糖質制限食を詳しく知りたい方は、わたしたちが編集・執筆した次の書籍や日本ローカーボ食研究会ホームページをご覧下さい。