灰本クリニック

2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(3)-総糖質量から個々の糖質源の管理へ-

投稿日時:2021年09月07日

 2014年に発表した研究結果を発展するために糖尿病薬(DM薬)を飲んでいない糖尿病患者に薬を使わずにゆるやかな糖質制限食単独で治療する方法を2014年から開始した。ところが、初診時にDM薬を飲んでいない患者は初診患者の半分にも満たないので症例数を集めるのにずいぶん時間を労した。
 その途中で不思議なことが起こった。2014年の研究論文によると、120gの糖質量を制限すればHbA1cは約1%下がるのだが、管理栄養士の指導通りにまじめに取り組んでいる患者のなかから予想よりHbA1cが下がり過ぎてしまう患者がしばしば登場したのである。図は67才女性患者である。
 夜の間食の蒸し饅頭とおかきを止めてもらった。この二つの糖質源に含まれる糖質量は120gなので理屈からはHBA1cは1%下がるはずなのだが、なんと治療前の8.3から6.2%まで下がってしまった。もちろんDM薬を使っていない。これはいったいなぜか? 
 これまでの私たちは米もソフトドリンクもラーメンも一律同じ糖質として扱っており、それを束ねた総糖質量を念頭に置いていた。その内訳は米由来が50%以上を占めているので、1%下がるという予想は米由来の糖質が大きく影響していた。私たちの疑問を別の表現にすると、米由来とラーメン由来糖質を同じ50gを減らしたときHbA1cの下がり方は違うのではないか。この患者の甘くないおかきや甘い蒸し饅頭と米ではHbA1cへの影響もそれぞれ違うのではないか。2015年頃のわたしたちはそのような疑問を抱えていた。
 DM薬を使わない症例数が集まったら、この疑問を解決するのが次の目標となった。2017年には症例は200例を超えたので、治療開始前で各糖質源由来の糖質量とHbA1cの関係を調べてみた。同じ糖質50gでも男ではソフトドリンク由来、ラーメン由来の糖質が多いほどHbA1cは高くなり、女では米由来糖質が多いほどHbA1cが高くなった。治療前の観察研究でも糖質源によって差があり、男女差もあった。この結果は2018年Diabet Metsy Obest誌に発表した。
 2019年春までに治療前3ヶ月から治療後6ヶ月までDM薬を使かわず、ゆるやかな糖質制限食だけで治療を行った患者は男138例、女107例を集めることができた。2019年夏頃から解析に取り組んだ。糖質源別のHbA1cへの影響を知ることができれば、糖質制限食の指導法は格段に進歩できるし、患者には今よりも優しいものとなる。10年以上に渡って糖質制限食の指導法の改良してきたが、いよいよその最終段階に入ったのである。

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