投稿日時:2021年01月06日
悪玉(LDL)コレステロールが高い人は心臓の血管が詰まりやすく、狭心症や心筋梗塞の危険が高いことは言うまでもありません。日本でも心筋梗塞を発症すると5%は死んでしまいます。特に糖尿病の患者さんは心筋梗塞の危険がより高いので、多くの人が悪玉コレステロールを下げるスタチンという薬を飲む必要があります(日本のガイドラインでは糖尿病患者さんのLDLコレステロールの目標値は120 mg/dl未満)。ではスタチンは何歳まで有効なのでしょうか。平均寿命を超えた高齢者でも飲む必要があるのでしょうか。
この疑問に応えるひとつの論文が発表されました。スペインの75歳以上の高齢者4万7千人を解析したところ、糖尿病のない75歳以上の高齢者ではスタチン治療で死亡が減りませんでした。一方、糖尿病のある高齢者では85歳前後まではスタチン治療で死亡率が減ることが分かりました。ただし、85歳以上ではその効果ははっきりしなくなります。糖尿病の方は少なくとも85歳ぐらいまではスタチン治療を行う意味がありそうです。75歳以上で糖尿病(予備群含む)や喫煙などの心筋梗塞のリスクがなく、ただ悪玉コレステロールが高いだけの人にスタチン治療を行う意味はないかもしれません。
出典:Statins for primary prevention of cardiovascular events and mortality in old and very old adults with and without type 2 diabetes: retrospective cohort study
2型糖尿病の有無にかかわらず高齢者および超高齢者の、心血管イベントおよび死亡率の一次予防のためのスタチン:後ろ向きコホート研究
Rafel Ramos et al.
BMJ. 2018 Sep 5;362:k3359. doi: 10.1136/bmj.k3359.