灰本クリニック

新型コロナウイルスについて(第3回:基礎疾患と死亡率の関係)

投稿日時:2020年04月18日

 第3回は海外の論文からの死亡率に関する情報をお伝えします。報道の通り、新型コロナウイルス感染症では、高齢者や重症の基礎疾患を持つ患者さんの死亡率が高いことが知られています。

 中国疾病対策センターからの約7万人の新型コロナウイルス感染症患者の解析によると、年齢別の死亡率は下の図1のようになり、50-60歳以上で急激に死亡率が上がることがわかります。男女別の死亡率は男性で2.8%、女性で1.7%と男性でやや高い傾向がありました。一方で、基礎疾患の全くない人の死亡率は0.9%でしたが、下の図2のように、心臓病があると10.5%、糖尿病があると7.3%、慢性の肺の病気(喫煙による肺気腫など)があると6.3%、高血圧症があると6.0%と高くなっていました。

 ただし、高血圧は高齢になれば発症しやすくなるため(=交絡因子と言います)、高血圧があるからといって必ずしも死亡率が上がるわけではないと思います。症例数が少ないものの、2020年4月12日の日本内科学会の緊急講演会での鈴木ら(国立感染症研究所)の約500例の解析では高血圧症の患者さんでの死亡率の上昇は見られませんでした。この報告でも高齢者(60歳以上)、糖尿病、心臓病では死亡率が上昇していました。

 COVID_19_03_01s.jpg
(中国疾病対策センターのデータよりグラフ作成)

 これらの報告から分かることは、新型コロナウイルス感染症で重症化し死亡率が上昇する”確実な要因”は「高齢であること(特に60歳以上)」だということです。当院に通院している患者さんの過半数がこれに当てはまると言えます。不急の外出は控え、他人との接触を極力減らし、うつさない、うつらないことが重要です。(文責:灰本耕基)


出典:Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China: Summary of a Report of 72 314 Cases From the Chinese Center for Disease Control and Prevention.
中国でのコロナウイルス感染症2019(COVID-19)の発生の特徴と重要な教訓:中国の疾病管理予防センターによる72314症例の報告の概要
Wu Z, McGoogan JM.
JAMA. 2020 Feb 24. doi: 10.1001/jama.2020.2648. [Epub ahead of print]


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